霜降と聞いて一枚羽織る夜 大澤 水牛
霜降と聞いて一枚羽織る夜 大澤 水牛
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 聞きなれない「霜降(そうこう)」という季語に合った状況を素直に一句にまとめている。霜が降るから寒くなる、だから一枚羽織ろうという感じですかね。
春陽子 「霜降」という季語から元禄時代の江戸情緒や時代性を感じました。辞書も引いて勉強させていただきました。
光迷 歳時記の最後の方に二十四節気が載っていますが、あまり読む人はいないでしょう。ましてやいま「霜降」などという季語を使う人も。そういう古い季語を引っ張り出し、日常の何気ない行動につなげたのがすごいですね。
水牛(作者) 二十四節気の季語を順々に詠んでいるのですが、これまで「霜降」の句が出来なくて、やっと初めて詠んだ句です。羽織ったのはカーディガンです。
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現代人にとって霜は関心を払うものではなくなった。「霜降」という言葉すら知らない人が多いと思われる。二十四節気には「小雪」もある。もとより女優でもなければ「こゆき」でもない。「しょうせつ」なのだが、これもというより二十四節気そのものが現代の生活から実感の乏しいものになってしまい、もはや遺物に近いのかもしれない。
(光 21.11.08.)