鮭来る今日は半どん村役場 谷川 水馬
鮭来る今日は半どん村役場 谷川 水馬
『この一句』
句を見た時に「ホントかな」と思いつつも、笑いを誘う内容と語調の良さに惹かれて点を入れた。句会でも、作った句ではないかなど半信半疑の声が出た。すると釣り好きで全国各地を巡った三薬さんが「新潟の村上なんか半どんにする村役場は本当にありますよ」と明快に肯定。お墨付きを得て句の評価がぐんと高まった。
水牛さんの解説によれば「村上など鮭の遡上する地域では、川のそばに鮭小屋が建てられ鮭番が見張っていた」という。歳時記を見ると鮭小屋も鮭番も季語として載っている。今は日本に帰って来る鮭の大半は洋上の定置網で獲られているが、昔は川に遡上してくる群を網に追い込んだり、こん棒で殴って捕獲した。何しろ大群なので住民総出で取り組むことになる。「鮭が来たぞ」との知らせに、役場も商店街も仕事を放り出して駆け付ける光景が目に浮かぶ。
小学校の頃の思い出だが、農家の子供は田植と稲刈の時期になると「農繁休暇」といって学校を休んで手伝っていた。静岡では茶摘み休暇があったという。全国には様々な産物があり、家族労働頼りの時代にはいろんな休暇があったに違いない。村上の役場は何休暇と呼んでいたのだろう。
(迷 21.11.03.)