人と灯の戻りたる街冬隣 杉山 三薬
人と灯の戻りたる街冬隣 杉山 三薬
『合評会から』(日経俳句会)
而云 今のことですね、分かりやすい。いかにも「冬隣」だという句と違って、それが却って余裕があるというふうになった。
迷哲 雰囲気がよくて。緊急事態解除後の時事句ですが時事句らしくないと言える。冬に向かう季節でちょっとした賑わいがある風景。
双歩 多少は寂しいのでしょうが、季語に寄り掛かっていないのがいい。
雅史 意外と早く戻って来た日常の光景です。ずっと続けばいいのですが。
朗 賑わいも多少は戻ったかなと実感しています。コロナ籠もりも終わりに近づいているのでしょうか。
光迷 今年ならではの一句でしょう、緊急事態宣言が解除され外出もしやすくなって。往時のように飲めや歌えやとはいかないけれど。
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「冬隣」という季語には、「ああ、厳しい冬が来る」という厳しく、寂しい感じがつきまとうのだが、この句の「冬隣」には明るさと温もりがある。言うまでもなく9月30日を以って「コロナ緊急事態宣言」が解除されたことによるものだ。作者は「こないだ府中を自転車で走った。人が出ているし明るい。ガラにもなくセンチメンタルに詠んだ」と言う。明らかに時事句なのだが、あからさまに時事を詠んだ感じのしないところがいい。
(水 21.10.29.)