木犀の香りのつなぐ記憶かな  流合 研士郎

木犀の香りのつなぐ記憶かな  流合 研士郎 『合評会から』(日経俳句会) 水牛 我が家にも木犀が一本あるが毎年律義に咲く。今年は例年になく早く10月初めにぱっと咲いて散ってしまいましたが、あの強い香りで、咲けば必ず気が付きます。これもその特徴的な香りを詠んだ。「つなぐ記憶」がことに上手いなと思う。 而云 記憶を呼び起こすという意味を「つなぐ記憶」、これは上手い。 青水 誰しもが思い当たる感慨を、洗練された措辞で的確に表現して秀逸。 操  木犀の芳醇な香りがつなぐ記憶。その記憶がどんなものかと想像をかきたてる。 幹事 久々に復帰の研士郎さんの句に両顧問が絶賛です。           *       *       *  操さんの句評にもあるように、どんな思い出なのか、この句は何も語っていないからわからない。でも、詮索する必要はあるまい。それこそ「いろいろな記憶」なのだ。遠くは子供時代から、近くはつい数年前まで、頭の中は「記憶」ではちきれそうになっている。それが、木犀の香りとともに、次々に蘇ってくるのだ。  仕事のこと、職場が変わったこと、身辺の環境変化等々わっと押し寄せて、俳句どころではなくなった。それが何とか一段落して、句作に時間を割く余裕が生まれたようだ。何よりである。数年のブランクを感じさせない感受性豊かな句を示してくれた。(水 21.10.27.)

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