風神も寝返りを打つ花野かな 玉田 春陽子
風神も寝返りを打つ花野かな 玉田 春陽子
『合評会から』(酔吟会)
三薬 寝返りとは何を意味するのか分からないけど、不思議な雰囲気を感じます。ぜひ作者の見解を…。
水馬 風に揺れる花々の大きな景がいいですね。ちょっと作りすぎの感もありますが。
水牛 風向きが変わって、秋草を斜めに押し伏せる景色が急に変化したところを「風神の寝返り」としたのだろう。実にうまいこと詠むものよ。
道子 「風神も寝返りを打つ」で気持ちいい風が吹き抜ける様を想像します。
鷹洋 怖い顔した風神も、見事な花野に嬉しくなって寝返りを打つ。いささか現実離れしていますが、ユーモア感覚に思わず笑いました。
春陽子(作者) 秋草に覆われている造成地で、大型犬が寝転び遊ぶ姿に出会いました。初案は「シェパードの寝返りを打つ花野かな」、次に「白豚の」「日本猿」等々遊び、「風神」に。童話の世界のようで気に入っています。
* * *
花々の波の流れが変わる瞬間を捉え、それを表すのに架空の存在である風神を引っ張り出し、寝返りを打たせた機知には恐れ入るほかありません。微苦笑を誘われますしね。うららかな秋の日の雰囲気にひたらせてもらいました。
(光 21.10.10.)