別所線に案山子百体新風景 堤 てる夫
別所線に案山子百体新風景 堤 てる夫
『この一句』
別所線は、北陸新幹線の上田駅と北向観音に近い別所温泉駅を結ぶ上田電鉄の路線である。全長11.6kmほどのローカル線で、大方の人は名前を聞いてもピンとこないだろう。しかし「2019年、台風19号で千曲川に架かった赤い鉄橋が落ちて…」と言えば、思い出す人も多いのではないか。その復旧がなったのは今春のことだった。
その沿線に突如、百体もの案山子が出現したというのだ。「正確には130体」という説も聞いた。いずれにせよ、どんな格好の、どんな表情の案山子なのだろうか。草取りに励んでいる女、稲架を組んでいる男、一休みしてお茶を飲んでいる一家など、様々なものが想像される。ウォーキングラリーさながらに、それらを眺め歩きたい。
案山子を活用したイベントには、数年前に奈良で出合った。高松塚古墳のある所から奥へ入った所で、雨催いのせいもあり、タクシーで見て回った。百体はなかったと思うが、「柿食えば…」の柿が随所に光っていた。上田の場合、果物となれば葡萄や林檎だろうか。特産品には松茸もある。今年が開業100周年という別所線で、洋装あり和装ありの案山子に会ってみたい。
(光 21.10.05.)