町を裂く稲妻見たり羽田便 須藤 光迷
町を裂く稲妻見たり羽田便 須藤 光迷
『合評会から』(番町喜楽会)
百子 飛行機が飛び立った時だと思います。やっと飛び立ったら眼下に稲妻、作者の心細さや怖さが思いやられます。
春陽子 こんなふうに上空から稲妻を見た句を読んだ覚えがありません。作者の視点のユニークさに一票投じます。
命水 雷が落ちる様子は、かつて操縦士だった時に何度か見たことがあります。自分の機体内部に光が走ったこともあります。自然の力におののく一瞬です。
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みなさんの句評を聞いていて、なぜこんな佳句を採らなかったのだろうと思った。おそらく「町を裂く」が少し大仰な表現だと思い、嫌ったのではないかと思う。
作者によれば、これは浜松上空を通過している時に見た光景で、自ら「怖いものですよ、下に稲妻が走るのは」と吐露されている。自衛隊機を操縦されていた命水さんの経験談にも迫力がある。「自然におののく一瞬」であれば、「町が裂ける」がごとく稲妻が走ったと見えるのは、少しも大仰ではないと思える。ようするに、自らの想像力の欠如からこの句を見逃したのだと思う。残念なことをした、と恥じている。
(可 21.09.17.)