窓開けて虫の音聞きて長湯かな  澤井 二堂

窓開けて虫の音聞きて長湯かな  澤井 二堂 『合評会から』(番町喜楽会) 白山 「開けて」と「聞きて」の重なりが少し気になりましたが、雰囲気はよくわかります。 迷哲 私も「開けて」「聞きて」が気になりましたが、そのことにより句にリズムが生まれたという効果もあるような気がします。いずれにせよ、いい場面が見えてきます。 幻水 典型的な日本的情緒を上手く詠んでいる。 斗詩子 マンション入居時、風呂に窓が無いのが悲しかったです。ちょっと風を入れて涼んだり、秋には虫の音も聞こえ、なかなか良いものでした。ついつい長湯もしたくなりますね。          *       *       *  評にあるように、これが日本の初秋の余情と思える。酷暑から爽やかな気候に移り変わるころは暑さの名残りがあり、風呂の窓をちょっと開けると虫の音に気づく。心地よさについつい長湯になってしまったという情景。外の爽気を感じる皮膚、虫の音に聞き入る脳の内、加えてぬる湯のまったり感が合わさって、作者をほんのささやかな陶酔境に誘ったのだろう。たしかに「開けて」「聞きて」の動詞の反復が俳句的には気になるけれど、「これしかない」という作者の表現意図もうかがえる。 (葉 21.09.14.)

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