肉ジャガや又大谷がホームラン  石黒 賢一

肉ジャガや又大谷がホームラン  石黒 賢一 『この一句』  ざっくばらんな人柄のメンバーが多い句会(三四郎句会)だけに、不可解な句もたまに出てくるが、掲句にはさすがに「?」と、思考が停止した。選句評に「肉じゃがとオオタニサーンとの組み合わせの是非は?」(有弘)というのがあった。「そうなんですよね」と頷きつつ、首を傾げざるを得ない。  しかし句を眺めているうちに具体的な状況が浮かび上がってきた。肉じゃがは特に子供たちの大好物と言えるだろう。ある家庭の夕食時、小学生の兄弟が肉じゃがにぱくついていると、つけっぱなしのテレビが嬉しいニュースを伝えた。「大谷が44号ホームランを放ちました」。兄弟が「やった!」と声を合わせているのだ。  かつて「配合」「取り合わせ」「二物衝撃」などという、句づくりが流行した時期があった。二つの概念をぶつけるように並べ、読む側に何らかのイメージを、またショックを与えようとする意図を持つ。作者は「オオタニサーン」の人気を借りて、令和の「二物衝撃」を試みたのではないだろうか。  なおこの句、無季のようだが、句会の兼題「じゃがいも(秋)」を詠んだもの。ご了解頂きたい。 (恂 21.09.12.)

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