盆踊り野球キャップのまねっ小僧 新井圭子
盆踊り野球キャップのまねっ小僧 新井圭子
『この一句』
俳句を始めて間もない人の作。「真似っ子」はよく聞くが、「まねっ小僧」は造語だと思う。意味はよく分かるので、目くじらを立てず、とりあえず認めることにしよう、と思ってしばらくしたら、野球帽を被った小学校低学年あたりの元気な、生意気な少年の盆踊りの姿や動きが浮かんできて消えない。困った、とまでは行かないが、少し困った。
ともかくそんな風のまねっ小僧が盆踊りの列に加わり、踊っているのだ。本人は面白おかしく踊ろうなどとは考えていない。一生懸命か、ふざけているのかも分からないが、見ている大人にはなかなか面白く、この句自体が、そんな雰囲気を持っているようだ。
念のため電子辞書の「複数辞書検索」で調べてみたら、広辞苑などの各辞書に「真似っ子」の項目がないのはどうしたわけか。確か「真似っ子真似ちゃん真似してる」という童謡があったはずで、世の中の常識的な言葉だと思われる。掲句は何らかの素質のなせる業か、偶然に生まれた一打なのか。この人の句をしばらく注目して行きたい。
(恂 21.09.08.)