宮相撲都会から来た子の本気 中嶋 阿猿
宮相撲都会から来た子の本気 中嶋 阿猿
『季のことば』
もう村相撲やら宮相撲などは全国にいかほど残っているのだろうか。伝統行事としてローカル紙やテレビが時たま報じるようだが、あまり印象にない。そもそも大相撲にしても新弟子確保に苦労し、モンゴルなどから素質のありそうな少年を引っ張って来るのが現状である。相撲部を抱える高校、大学があり(女子部員も少数ながらいる)これが最後の砦となっているようだ。
この句は神社の秋祭の奉納相撲を詠んだ。小学生か中学生の部で、この年頃は世故に通じていないから、真剣に勝負に挑んでくるのだろう。「都会から来た子」とあるので、田舎に越して来た少年ともみえる。今日日ちょっとレアケースとも思えるが、コロナ禍でリモート勤務ができる両親が田舎に居を移したと取ればよいか。
都会っ子は田舎で苛められるのが通り相場だ。戦中の学童疎開経験者の悔しさはよく聞く。この都会っ子はそういうこともあってか、田舎のガキ大将に本気でぶつかっていく情景を彷彿とさせ写実味を出している。「都会から来た子の本気」と、口語体のぶっきら棒が効いている。上五は草相撲、村相撲でもいいと思ったが、作者は宮相撲と格調を選んだか。
筆者の小学生時を思い出す。大柄な子との対戦で意気込み、一気に押し出さねば負けると猪突猛進した。が、ひらり躱され自ら土俵を飛びだした。これも「本気」ゆえ。
(葉 21.09.30.)