エレベータ晩夏の街へ急降下  玉田 春陽子

エレベータ晩夏の街へ急降下  玉田 春陽子 『合評会から』(番町喜楽会) 水牛 スカイツリー、東京タワー、あるいは都心の高層ビル。空調完備の高層階からあっという間に濁世に急降下です。実にうまい。ただし、エレベータのこういう句には類句がありそうだ。 木葉 高速エレベータが降りて行く晩夏の街は、いまは新型コロナで緊急事態宣言が発せられている街でもある。降下ではなく、真っ逆さまに落ちて行くという感もある。 可升 デパートかホテルか、ガラス張りで外が見えるエレベータを想像する。スピード感のあるいい句です。           *       *       *  どこの町だろうか?どんなエレベータなのだろうか?作者は何のためにこのエレベータに乗ったのだろうか?近頃、説明したがる俳句が多いなかで、作者はそんなことは一切語らず、読み手の想像をたくましくさせる。  急降下する先は、「熱暑の街」でも、「コロナの街」でも良かったのかもしれない。だが、作者は「晩夏の街」を選んで詠みきった。そのことが間違いなく、この句を奥行き深く詩情を感じさせるものに仕立て上げているように思う。ガラス張りのエレベータを想起したのは筆者だが、そういうエレベータの多くは「急降下」はしない。作者の作った幻想のエレベータではないかという気がする。もちろん、それで良いのだと思う。 (可 21.08.27.)

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