残暑を傾いで歩く最後尾     大平 睦子

残暑を傾いで歩く最後尾     大平 睦子 『季のことば』  残暑の候。夏が果てて暦の上では秋なのだが暑熱地獄は容赦ない。異常気象とは言っていられないこの夏の暑さと、ここ旬日にわたって続く豪雨禍。さらにコロナの感染者、重症者が激増するするさなかの「残暑」を詠むのが今月の兼題である。とにもかくにも不自由な日常生活下である。「一枚も出さず貰わず残暑見舞い 光迷」という句も選句表に並び、残暑見舞いどころじゃない空気が支配している。  掲句は何か気になった一句であった。残暑の中を作者は歩いている。歩いているとはどのようなシチュエーションの中なのか分からない。単なる公園散歩や街歩きではない気がする。それなら場所はどこか。だいぶん疲れて歩いている雰囲気がうかがえる。トレッキングの最中か、作者にはありえないかもしれないが、五輪競技の連想で競歩なのかもとも思ってしまった。傾いでいるのは頭か上半身かと考えは続いた。なおも想像をたくましくすると、時節柄コロナワクチン接種の行列に付いているのかもと思った。「残暑を傾いで歩く」という措辞が今を象徴しているようで意味深長だ。ここでは「傾いで」がいい働きをして、「最後尾」という後ろに誰もいない心細さを強調した。 (葉 21.08.24.)

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