細き手や団扇の先に子の寝息    篠田 朗

細き手や団扇の先に子の寝息    篠田 朗 『合評会から』(日経俳句会) 昌魚 素敵な景ですね。寝ているお子さんを扇いでいる綺麗なママの白い指が眼に浮びます。 二堂 きっとお母さんと一緒に昼寝しているんでしょうね。ぐっすり寝ている様子がわかります。 而云 「団扇の先に子の寝息」はごく平凡。しかし改めて「上五」に目を戻したら、細き手に手首をぎゅっと掴まれてしまった。 迷哲 優しい風を受けて、すやすやと眠る子供の寝姿が浮かびます。            *       *       * 団扇の兼題句の中で、この句と「幼子に撫でるがごとく団扇風」(和泉田守)が目に留まった。どちらも寝入る子供に母親が団扇で風を送っている様子を詠んだもの。掲句は団扇を握る母の手に着目し「細き手」と優しさを視覚的に詠んでいる。これに対し幼子の句は「撫でるがごとく」と、母親の所作にこもる情愛を表現している。どちらも心惹かれたが、「細き手」の印象の鮮やかさからこの句を選んだ。細き手から団扇、眠る子へと視線がスムーズに導かれる。 作者は今どき珍しい四人の子持ち。子育てに追われた若き日に、家で何度も目にした光景に違いない。子供たちは成人し、今や孫もいる。かつての「細き手」は、今度は孫に向けて「撫でるがごとき」風を送っているに違いない。 (迷 21.08.04.)

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