向日葵が迎へてくれし無人駅 前島 幻水
向日葵が迎へてくれし無人駅 前島 幻水
『合評会から』(番町喜楽会)
白山 昔、こんな風景の所に吟行に行ったことを思い出し、懐かしい景が浮かんできました。
可升 「また無人駅かぁ」と思い、採るのを躊躇したのですが、絵になるいい句だなと思い直し採りました。使い古された素材を使っていても、いい句はやはりいいですね。
光迷 「向日葵が迎へてくれし」で、無人駅になって寂しいけれども、なんだか暖かい感じがする。
水兎 無人駅にも、心遣いがあるのが嬉しいですね。
幻水(作者) 枕崎での実景です。
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七月の番町喜楽会で最高点を得た句である。無人駅と桜など花を取り合わせた句は多い。向日葵も珍しくないかも知れないが、この句は「迎へてくれし」の七音から作者のいろいろな思いを読み取ることで、向日葵の印象がより鮮やかになる。誰もいないと思った無人駅に大きな向日葵を見つけた驚き、「ようこそ」と笑いかけるような花に感じる親しみ。向日葵に元気をもらった作者は、花を植えて旅人を歓迎しようという地元の人々の温かい心も感じたに違いない。
作者のコメントを少し補えば、この無人駅は薩摩半島の枕崎線にある西大山駅であろう。日本最南端のJR駅として知られ、雄大な開聞岳を望む畑の中にある。春先の菜の花が知られているが、近年は向日葵畑と開聞岳の写真も有名になっているという。
(迷 21.07.26.)