麦秋や一直線の畑道 髙石 昌魚
麦秋や一直線の畑道 髙石 昌魚
『合評会から』(日経俳句会)
水牛 一見ありきたりな俳句のようだが、このようにストレートに詠むのはなかなかのものだと思う。見はるかす麦の秋の景色がすっと浮かんで来る。自然に両腕を高く挙げて深呼吸だ。
朗 一直線という言葉選びが素晴らしいと思いました。麦畑の広さをどう表現するか、腐心するところですが、一直線の道によって麦畑のイメージに奥行きが出ています。この道は空まで続いている感じですね。
三代 黄金色を貫く一本道の風景が気持ちよさそうです。
道子 微風吹く田園風景が目に浮かびます。
* * *
選句した時に述べた上記の言葉で言い尽くしているのだが、作者が分かってみると「やはりなあ」と思う。私より七ツも八つも上の卒寿を越された大先輩なのに、こうして若々しい精神を持ち続けていらっしゃる。「いつごろか忘れましたが、北海道の美瑛に行った時の麦畑を思い出して作句したものです。一直線の長く細い道が印象的でした」と言われる。はるか昔の記憶の映像にすら一点の曇りも無い。酒浸りの咎めが出て、五感鈍磨せる己を恥ずかしく思うばかりである。
(水 21.07.20.)