竿捨てて逃げ出す子らに雷とどろ 中村迷哲
竿捨てて逃げ出す子らに雷とどろ 中村迷哲
『合評会から』(番町喜楽会)
双歩 そうなる前に早めに避難すべきでしょう。特に子供は。
水馬 釣りの時(海でも川でも)に雷が聞こえるということは、いつ落ちても不思議のない状態のようです。子供のころを思い出しました。
二堂 ゴロゴロピカと雷がやってくる。子供だけでなく誰にでもとっても怖いものです。その怖さがうまく表現されています。
的中 僕もゴルフ場で足早に駆け込むゴルフ客の句を詠もうと思ったのですが、うまくいきませんでした。雷を恐れて我先に逃げ出す子供の様子が微笑ましく、雷の「とどろ」という音もユニークですね。
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作者の生まれ育ちは佐賀。小運河(クリーク)が縦横に走る平野で、釣りの最中にゴロゴロと来たら身を寄せるところがない。「必死で逃げましたよ」と思い出を楽しそうに語る。評者が口々に云うように、そういう「怖いけど面白い」感じがよく出ている。
「とどろ」という古風な形容語が効いている。「轟く」から来ている言葉で、音が響き渡る様を言い、まさに雷様に追い掛けられている気分がする。
(水. 21.07.15.)