ワクチンを打った帰りに鰻喰う 印南 進
ワクチンを打った帰りに鰻喰う 印南 進
『合評会から』(三四郎句会)
圭子 鰻の大好きな私には気になる句です。
賢一 ワクチンを打って、コロナのプレッシャーから解放された、ヤッター! 蕎麦ではないでしょう、鰻でしよう。こういう際の解放感を鰻で表したのは凄いセンス。
而云 状況や気分はよく分かるが、「鰻喰う」は愛嬌がないなぁ。
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「鰻食う」はぶっきらぼうな表現である。俳句も文学、文芸の一つであれば、たおやかな、味わいのある表現が必要のはず。下五は「うなぎ膳」くらいでどうか、と私は考えた。これなら「立派な鰻料理を前にして」という感じが出てくるはずだ。ところがこの原稿を書き始め、(三四郎句会)という表記を見てから、考えが変わった。
この珍しい名の句会は、某大学の柔道部ОBたちが立ち上げた。句会が第三木曜(航空業界では「三、四」で表すという)であるところから、初めは「三四会」としたが、後に姿三四郎にちなんで、と「三四郎句会」と変えた。すなわち句会のメンバーはもともと、食べ物の形式や見栄えなどは気にしない柔道マンなのだ。「鰻食う」が一番似合う、と思い直した。
(恂 21.06.23.)