竹の皮さてもみごとな脱ぎっぷり  谷川水馬

竹の皮さてもみごとな脱ぎっぷり  谷川水馬 『季のことば』  「竹の皮脱ぐ」は仲夏の季語。例句も少なく、わりとユニークな季語だ。  筆者の散歩コースには竹林が何箇所かある。暖かくなってくるとあちこちに美味しそうな筍が顔を出す。筍の成長は早く、ぐんぐんと伸びてゆく。背丈は伸びるが、太さは変わらない。つまり、店頭に並ぶ筍の底の太さがその竹の太さだそうだ。筍の皮は成長しないので、竹の成長に追いつかずはち切れてしまう。喩えが特殊で恐縮だが、「超人ハルク」が巨大になるときの衣類のような感じだ。今年竹の根本に茶色い皮がへばりついてる様はなかなか面白く、幾何学的な形が絵になるので、写真に撮ったり句を作ったりもした。  この句を読んで、作者の散歩コースと筆者のそれは、つくづくよく似ているのだと感じた。以前、このブログで同じ作者の「渾身の一日花やオクラ咲く」を紹介させてもらったが、そのときも筆者は、自身の散歩コースでオクラの花を見た感慨を書いた。今回もまた同じ光景を見ていながら、ろくな句を作れなかった筆者と、やすやすと佳句を物した作者のさてもみごとな詠みっぷりに脱帽である。(双 21.06.15.)

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