ブラウスの袖の膨らみ初夏の風 髙石 昌魚
ブラウスの袖の膨らみ初夏の風 髙石 昌魚
『合評会から』(日経俳句会)
鷹洋 初夏の涼風を袂に入れて行き交う女性。細かいところに着眼したのが素晴らしい。モネの印象絵画を想起しました。
弥生 「初夏の風」の措辞が触覚を刺激してきます。ブラウスの袖が膨らむのはまさにこの時期の風、と実感させられる一句です。
二堂 初夏の風をブラウスの膨らみに感じたのが面白い。
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「気持ち良い外歩きのシーズンとなりました。街ですれ違った素敵な女性の袖が膨らんでいた実景です。採りあげて頂き感謝いたします」とは作者からのメール。
いつも背筋を伸ばし、颯爽と歩む。卒寿をとっくに越えたお方と聞けば誰もが驚くほど、身も心も若々しい。街歩きが大好きで、眼に止まった情景をそのまま素直に詠む。その目の付け所がまた実に若々しく、好奇心に溢れかえっている。
この句を選んだ時にはてっきり現役世代の作品だと思っていたのだが、作者名が明らかになって、びっくりした。と同時に「見習わなくちゃ」と、密かに心のネジを巻直すのであった。
(水 21.06.09.)