菖蒲咲く仮免教習初路上 鈴木 雀九
菖蒲咲く仮免教習初路上 鈴木 雀九
『合評会から』(日経俳句会)
阿猿 教習所に通い始めたのはまだ肌寒さの残る季節で、やっと仮免で路上に出たら菖蒲の季節になっていたと、時間の経過がある。
水馬 仮免で初路上の緊張感を表現しているのはお上手。なかなかこの発想は出て来ない。
早苗 リズムが素晴らしい。菖蒲の風情あるたたずまいと自動車免許教習との風景が組み合わさって新鮮。
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なるほど、菖蒲のある風景と車を運転する人にとってはあまり思い出したくない免許教習を掛け合わせていて目を引く句だ。大方が経験した通り、路上教習に出るまでにはかなりの教習時間が必要になる。今はどうか知らないが、昔の教官のなかには居丈高の人物もいて気分を悪くした。「菖蒲咲く」で心地よい季節の到来と道端の花菖蒲の鮮やかさが実感できる。これが教習の憂さを昇華しているようだ。「仮免教習初路上」と漢字の羅列は窮屈といえば窮屈に見えるが、待ちに待った初めての路上教習の緊張とうれしさがない交ぜになった心理がうかがえて効果を出したと思う。
(葉 21.06.01.)