ラヂオより昼の憩ひや冷し汁   金田 青水

ラヂオより昼の憩ひや冷し汁   金田 青水 『季のことば』  「冷汁(ひやじる)、冷し汁」は夏の季語。食欲の落ちる暑い季節に、味噌や醤油で仕立たてた冷たい汁をご飯やうどんなどにかけて食べる。昔は、農家が忙しい時期に、冷たい井戸水で味噌を溶かし胡瓜などの夏野菜を刻んで麦飯にぶっかけて食べていたらしい。調べてみると、似たような習慣が全国に形を変えて残っていて、秋田、山形、埼玉、愛媛、広島など各地で郷土料理として親しまれているという。  殊に宮崎の冷汁は有名で、農水省のホームページにも宮崎県の郷土料理として紹介されている。日本経済新聞宮崎支局長のコラムでは、「鎌倉時代に僧侶が各地に広めたのが発祥とされ、時代とともに姿形は変わったが、宮崎県の冷や汁が原形にもっとも近いという」と紹介されていた。筆者も福岡で勤務していたころは、宮崎の冷汁にはずいぶんお世話になったものだ。  一方、「ひるのいこい」は、1952年に始まったNHKラジオを代表する長寿番組。全国各地から寄せられる季節の便り、生活に密着した俳句や短歌を、ゆったりとしたアナウンサーの語り口で歌謡曲などとともに放送する癒やし系の番組だ。  冷汁の素朴な味と「ひるのいこい」の醸しだす雰囲気とが絶妙にはまり、月例で人気を集めた。冷汁を懐かしむ筆者も一推しの一句である。 (双 21.05.31.)

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