村祭助役の亡父の酔ひ加減    大沢 反平

村祭助役の亡父の酔ひ加減    大沢 反平 『季のことば』  「祭」という五月の兼題、句中に詠みこめる対象はかぎりなく広い。たんに祭と言えば夏の季語となるが、秋の「秋祭」は別ものとしても「祭」と付く季語は多い。歳時記には「祭髪」「祭衣」「祭囃子」「祭太鼓」「祭提灯」「祭笛」「祭舟」などと並ぶ。その他、掲句のように「村祭」とか「祭膳」「御旅所」「水祭」「宵祭」と詠む手もあるし、「葵祭」という固有名詞をじかに持ってくることもできる。ちなみに上記歳時記に載っている以外のものは、今回の投句者それぞれが季語として使ったものだ。ことほどさように祭の句は自由自在に作れると言ってもいいだろう。  作者は村祭を持ってきた。八十路の作者だから古い昔の思い出である。この句からはさまざまな情報が読み取れはしまいか。作者は筆者の会社時代の大先輩であり、同じ句会で席を並べている。といっても私事にわたることは詮索できない。そうか父君は村の助役であったか。謹厳だがおそらく酒好き。村の名士であり、祭りの時には神輿の先導役でもやられたのかとも想像する。祭の直会の席の父君を垣間見たら、役目を終えた満足感で気持ち良く酔っていた、という情景とみた。大昔の父親を回想し、ほのぼのとする作品と思う。作品から作者の来し方まで見えてくるのも俳句だろうか。 (葉 21.05.28.)

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