リハビリに明暮れし間に柳絮飛ぶ 藤野十三妹
リハビリに明暮れし間に柳絮飛ぶ 藤野十三妹
『季のことば』
柳は晩春四月、葉が出揃う前に目立たない花を咲かせ、実が熟すと割れて綿毛を持った種が風に乗って舞い飛ぶ。「銀座の柳」などで有名な枝垂柳は奈良時代に中国からもたらされたもので多くが雄の木なので柳絮を飛ばさないが、在来種のコリヤナギ、ハコヤナギ、カワヤナギなどは盛んに柳絮を飛ばす。
柳という植物は全世界に400種類以上もあるそうで、街路樹のポプラも柳の仲間である。日本人は柳と聞けばすぐにヒュードロンドロン「うらめしやあ」と女の幽霊が出てくる枝垂柳を思い浮かべるが、枝垂れる柳はむしろ少数派で、大半はしなやかではあるが真っ直ぐに枝を伸ばすものだという。そう言えば我が国固有のネコヤナギもコリヤナギも枝は真っ直ぐだ。ともあれ、こうした柳の絮(わた)が舞う頃になると、春闌(はるたけなわ)である。
そんな折に、作者はようやく骨折だかぎっくり腰だかのリハビリ治療を終えようとしている。「痛い、苦しい」と悲鳴を上げながらも、何とか正常な日常を取り戻したいという執念。気がついたら柳絮の舞う季節になっていた。とにもかくにも「良かったですねえ」と言葉をかけたい。
(水 21.05.16.)