自粛時短柳に風の心持ち 大平 睦子
自粛時短柳に風の心持ち 大平 睦子
『この一句』
「自粛」「時短」とジで始まる言葉が二つ並び、ハハーンと思って進めば「柳に風」なる意外な文句の登場。さらにそこへ「心持ち」という微妙な表現が付け加わった。言葉としては「コロナ」も「ワクチン」も姿を現さない。だがこれは昨年、疫病に憑り付かれ、二進も三進もいかない日本の鬱屈した状況を的確に掬い上げている。
それにしても、外出自粛にもレストランなどの営業時間短縮にもいささかうんざりという市民の気分を「柳に風」とは実に巧く表現したものだ。気に懸かったのは、その後に続く「心持ち」が作者の気持ちなのか世間の気分なのか、どちらにも解釈できること。ここは後者と理解し、世の中を風刺する時事句と受け取った。
それにしても、またまたの緊急事態宣言。今度は酒類の提供もダメだと。大声を出して喋るとコロナ蔓延につながるかららしい。この事態が、この先どれくらい続くのか。不通のコロナ接触確認アプリ、後手後手のワクチン調達、厚労省や政府、自治体などの仕事ぶりにはうんざりである。だが、改善の気配はない。「糠に釘」なのだ。
(光 21.04.26.)