紫雲英咲く彦根は城と湖の町   須藤 光迷

紫雲英咲く彦根は城と湖の町   須藤 光迷 『合評会から』(酔吟会) 青水 関東者からするとずるいと云いたくなる。うまいもんだねえ。 春陽子 季語が効いた、旅に誘う素晴らしい一句。コロナが納まったら、彦根吟行に行きませんか? 水牛 「おっしゃる通りですね」と言うより他ない句ですが、紫雲英の咲く頃の彦根はいいですね。いかにもうららかな感じが伝わってきます。 *       *       *  最近はあまり聞かないが、「俳句をひねる」という常套句がある。苦心して俳句をひねり出すと言う意味だろうが、ストレートに表現するのではなく、読み手の関心を誘うような措辞や表現を使う、というようなニュアンスもあるような気がする。 この句には、そういう意味でひねったところがなく、季語の「紫雲英」に「彦根は城と湖の町」という当たり前のことをぶつけ、彦根の春の素晴らしさを平明に詠んだ句である。最初に読んだ時、筆者はその平明さからこの句を素通りしたのだが、再読して、その平明さゆえになんとも気分の良い句に仕上っていることに気づかされた。この句を「ひねって」しまうと、おそらくその良さが消えてしまいそうだ。ひねらずに止めるのは、結構むずかしい技のような気がする。 (可 21.04.14.)

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