黙々と距離取る子等の春浅し 田村 豊生
黙々と距離取る子等の春浅し 田村 豊生
『この一句』
黙々と互いの距離を取る子供たち。「何やっているの?」「どうして?」などといぶかる人は今どきいないはず。いわゆるソーシャルディスタンスである。コロナ禍によるウィルスの感染から身を守るための「三密」(密閉・密集・密接)を避ける距離のことだ。人と人の間を一定以上の距離(おおよそ二㍍だという)を取らねばならない。
句の子等は小学生か、もしかしたら幼稚園児かも知れない。運動場か体育館に集合した時の様子と思われるが、子供たちは昨年来、何度も何度も互いの距離をとることを実習してきたのだ。先生の指示を受けるまでもなく、前後・左右を見まわし、互いの距離を保ちながら黙々と整列する。上手くできたことを喜ぶべきか、悲しむべきか。
この句会の兼題の一つが「春浅し」だった。掲句の場合、兼題に相応しい状況を探したのだろうか。幼稚園などでこの様子を見て、そうだ兼題は「春浅し」だった、と気づいたのか。ともかく季語の「春浅し」は句の状況とぴったりで、実に寒々とした様子と見ることも出来よう。子供たちはコロナ社会をどうやり過ごしていくのだろうか。
(恂 21.04.06.)