ランチ待つ鳩の行列春の屋根 斉山 満智
ランチ待つ鳩の行列春の屋根 斉山 満智
『この一句』
よく観察しているなあ、それをまた、こうしてよく句にしたなあと思う。
駅や公園には「鳩に餌をやらないでください」という張り紙があるのをよく見る。土鳩(ドバト、イエバト)という野生のハトが寺社や公園、駅舎や人家の周辺にはたくさんいる。繁殖力が旺盛で、餌があるところではむやみに増える。
太平洋戦争末期から敗戦後数年間は、餌が無くなり、また片端から捕まえられて焼鳥にされてしまったので、東京はじめ大都市では激減した。小学生だった水牛も苦心して捕まえては食べた。少し臭い肉なので、味噌と塩を摺り込んで、当時は冷蔵庫が無かったから蠅帳に入れて翌日焼くと、とても旨かった。しかし、ハトはよちよち歩いてるようで、いざ捕まえようとすると難しい。いろんな仕掛けに苦心したのも今となっては懐かしい。
増えすぎて迷惑がられる存在になっているが、鳩に罪は無い。此の世に生を受けたれば必死に餌を求め、力を蓄え、子孫を残す努めを果たさねばならぬ。
親切で優しいおばあさんが毎日お昼になると残りご飯や餌を庭に撒いてくれる。それを待ちかねた鳩が屋根の棟瓦に一列に並んでじっと待っている。うらうらとした陽射しに世は事も無しである。
(水21.04.01.)