並ぶ列知る人ありて桜餅 鈴木 雀九
並ぶ列知る人ありて桜餅 鈴木 雀九
『合評会から』(日経俳句会)
阿猿 餅や団子ごときに人は並ぶ。最近はソーシャルディスタンスをとりながら。暖かくなってきたから並ぶのも苦にならない。何気ない光景も春に向かう時間の中にある。
芳之 「ここの桜餅は、おいしいですよね」という声が聞こえてきます。
十三妹 なにごとにもすべて並ぶのは大嫌いですが、この句はとてもホッとした安らぎを与えてくれました。「桜餅」が絶妙です。
双歩 何を「知って」いるのか?行列ができる店か、行列に並ぶ人か。人のようだが、いろいろと想像を巡らせられる。
* * *
一読、和菓子屋さんの行列の中に知人を見かけて、声をかけたものの何となくお互い照れつつ「桜餅は好物で、ここのは人気ですね」とか何とか挨拶している光景が浮かぶ。もう一つ、知る人ぞ知る桜餅の人気店を誰かに教えてもらったのかも知れない。もっともその場合は、「並ぶ列」ではなく「並ぶ店」となるだろうから、やはりこの解釈には無理がある。いずれにしても、「桜餅」の語感の優しさと柔らかさがこの句の人気のポイントだろう。
ところで、桜餅には小麦粉(関東)と道明寺粉(関西)の二種類あるが、江戸の真ん中でクリニックを開業している作者は小麦粉派だろう。筆者は道明寺粉派だ。
(双 21.03.18.)