籠り居や雛と分け合ふ菓子あられ 前島幻水
籠り居や雛と分け合ふ菓子あられ 前島幻水
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 虚実はどーでもいい。情景がきっちり、過不足なく描かれていて、しかも説得力のある詩情が流れている。
斗志子 例年だったら雛祭には近所の子も交え賑やかなのに。今年は雛に語りかけつつ菓子をぼそぼそ一人で食べている。寂しさがぐっとくる。
二堂 ちょっと寂しい雛祭ですね。コロナ禍で仕方ないですね。
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同じコロナ禍にある雛祭だが去年と今年に違いはある。去年の三月はコロナの流行が顕著になり始めた頃、今年は非常事態宣言下の三月三日。一年を経て巣籠り生活に慣れたとはいえ、新たな敵・変異種の出現があり緊張感は増している。孫たちを招いて雛祭のひと時を楽しむのは憚れ、それでも祖父母はお決まりのように雛を取り出し部屋を飾りたてる。老夫婦二人だけの雛祭は言葉少なく寂しい。ばら寿司や蛤の吸い物は作ったのだろうか。雛壇にはあられや菓子があるが分け与える孫はいない。雛が孫の代わりだと思いつつ、非常事態下の今年は二人で食べるしかない。
(葉 21.03.15.)