受付に手彫りの雛や婦長作   玉田 春陽子

受付に手彫りの雛や婦長作   玉田 春陽子 『この一句』  筆者を含めて、この句に点を入れた人はみな下五の「婦長作」に惹かれて採っている。「婦長作」というきっぱりとした措辞が、うまく一句を締めている。手彫りの自作雛を病院に持って来て受付にそっと飾るこの婦長さんが、部下や患者から愛されている人であろうことが句の雰囲気から読みとれる。想像をたくましくすれば、手彫りの雛の映像すら浮かんで来そうである。  ところで、看護婦を看護師と呼ぶようになって久しいのに、婦長さんはいまだに婦長さんなのだろうか、とふと思った。幸いにしてと言うか、この場合は残念ながらと言うべきか、あまり病院のお世話になっていないので実態を知らない。ネットで調べてみると、2002年に「保健婦助産婦看護婦法」が「保健師助産師看護師法」となり、その時から「看護婦長(婦長)」は「看護師長(師長)」となったようだ。時を経て「看護師」という呼び名は定着しつつあるが、「師長」という呼び名は筆者などには耳慣れない。  たとえば、この句の下五が「師長作」だったら高得点句になったかというと、おそらくそうはならなかった気がする。やはり「婦長作」だから点数が入ったのだろうと思う。男女同権はもとより推進されるべきだが、こういうところはやはり慣れるのに時間がかかるような気がする。蛇足ながら、この「みんなの俳句」のコメント執筆者が全員男性なのが最近すこぶる気になっている。求む!女性執筆者。 (可 21.03.14.)

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