土雛の点が三つの目鼻かな    廣田 可升

土雛の点が三つの目鼻かな    廣田 可升 『合評会から』(番町喜楽会) 金田 完成度の高い俳句です。季語もリズムも措辞も575に収まり、しかも読み手を穏やかなところへと運んでくれる。 山口 時々見かける粘土の手作り雛が私は好きだ。ちょこんと顔に三つの穴。作り手によって色々味があり愛嬌がある。 澤井 素朴な土雛の姿がよくわかります。        *       *       *   3月初めの句会の兼題は、季節に相応しく「雛祭」。投句作品の内容は、雛祭と家族のこと、あるいは雛祭に寄せる心情などを詠んだもののほか、雛人形そのものの表情や形状などを詠った句が多かった。その中でも江戸時代の享保年間に広まったという「享保雛」、山口市の漆塗りの「大内人形」、そして掲句の「土雛」が目を引いた。  衣装を纏った高価な人形とは対極の土を捏ねただけの手作り雛。しかも目鼻は丸い箸の先か何かで穿った小さな穴だけ。原始的な分、アニミズムの雰囲気が漂い、「人形(ひとがた)」や「形代(かたしろ)」も想起される。掲句に出会い、雛祭の起源に思いを馳せるのだった。 (双 21.03.12.)

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