エコバッグはみ出す野菜春一番  大下 明古

エコバッグはみ出す野菜春一番  大下 明古 『この一句』  今年の春一番はずいぶん早く吹いた。関東では2月4日、立春の翌日だった。去年より18日早く、これまででもっとも早かったという。春一番は、立春から春分までに吹く強い南風のこと。期間限定なので春一番が吹かない年もあるとか。この言葉を聞くと何となく「春がきた」という気にさせられる。  立春、春一番と耳に嬉しいニュースを耳にして、作者は買物に出た。スーパーの野菜売場には春野菜が溢れ、心も晴れやかに。あれもこれもと、ついつい買い足して持参のエコバッグはすぐに満杯になった。店を出れば、はみ出した野菜が折からの春一番にあおられたのかも知れない。いかにも春らしい明るさに満ちた掲句は人気を呼び、高点を得た。  「春キャベツ、新じゃが、新たまねぎなど春の野菜で一杯になった買物袋。そこに春一番。なんと生命力に溢れた句。エコバッグで時代を切り取ってみせるところも欲張りで素敵」という阿猿さんの感想が、他の選者の声も代弁している。作者は主婦らしく、葱、大根、水菜、小松菜、葉付き蕪、芹などの野菜も上げるが、実は買物へ行くのは在宅勤務になった夫だ、と落ちをつけた。 (双 21.03.05.)

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