守り人の消えし灯台野水仙 中村 迷哲
守り人の消えし灯台野水仙 中村 迷哲
『合評会から』(番町喜楽会)
光迷 日本から灯台守の姿が消えたのは15年前とか。無人化・省力化、さらにリモートという時代の流れを感じ、考えさせられました。
木葉 「喜びも悲しみも幾年月」という昭和の名画と主題歌が蘇ります。灯台守はいまやなく無人の灯台に。伊豆下田の白亜の灯台を背景に白い野水仙の群落があるのみ。
幻水 伊豆下田の灯台にはもう守り人はいないと思うが、今は一面に野水仙が満開だろう。
* * *
句意はきわめて明確。「あの白い大きな灯台から、灯を守る人がいなくなって幾歳月…。だが、春が来れば水仙は以前と変わらず綺麗な花を咲かせている」…。人間と自然、歳月と郷愁である。ちなみに日本で最後の有人灯台は五島列島の女島灯台で、灯台守が姿を消したのは2006年12月のことだった。
雨の日も風の日も嵐の夜も灯を守り続ける灯台守の仕事は、つらく骨の折れることに違いないと思う。だが、社会の安全のために灯は消せない。縁の下の力持ちそのものではないか。コロナ社会で灯台守に相当する仕事となると、看護師や保育士、また宅配弁当の配達人など。口だけの人はいらない。
(光 21.02.25.)