目で笑ふ難しきこと冬籠り 池村実千代
目で笑ふ難しきこと冬籠り 池村実千代
『おかめはちもく』
作者は「自句自解」を寄せて、「いつもマスクをしている日常では「笑顔」という言葉がなくなってしまいそうです。マスクをして笑ってみたけれど、目で笑顔を表現するなんて至難の技ですね。でも楽しいエネルギーを目で表現できるかしらと鏡をのぞいてみました。自粛生活と寒くて外に出たくないある日のひとこまを詠んでみました」と述べている。コロナ禍の冬ごもりの所在無さに、独り鏡に向かって百面相を演じている作者の姿が浮かんできて楽しい。
ただ、合評会(これまた集まっての句会が中止で「メール合評会」となったのだが)で、「三段切れになっているのが残念」という意見が出た。確かにこの句は、「目で笑ふ」「難しきこと」「冬籠り」と上五、中七に「切れ」が入り、ぶつ切れ状態になっている。句意を読み取る分にはこれでも問題ないのだが、口ずさんでみると、どうもこのぶつ切れが気になる。さらに、「難しきこと」が目で笑うことの難しさなのか、なにか「難しい事」が生じて目で笑ってやり過ごそうとしているのかなどと、読者はあらぬ方向へ思いを走らせたりする。
俳句はクイズではないのだから、なるべく分かりやすい叙述にした方がいい。ここもあれこれ考えず、単純に語順を変えて、「目で笑ふことの難し冬籠り」で良いのではないか。
(水 21.02.05.)