強東風や一息ついて杖の人 星川 水兎
強東風や一息ついて杖の人 星川 水兎
『合評会から』(番町喜楽会)
満智 よく見かける風景。がんばれの気持ちが伝わります。
てる夫 向かい風となってよほど歩きにくかったのでしょう。老人の散歩、時間はあるのですから、ゆっくり行きましょう。
可升 杖を使ったことがないので、実感としてはわかりません。けれども、おそらくこう云うことになるのだろうなと思わせる、説得力のある句だと思います。
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歳時記を繰ると春風もいろいろで、「東風」「貝寄風」「涅槃西風」「春一番」「春疾風」などが出てくる。それぞれに表現する時期や場面が微妙に異なるのだろう。
春一番は気象用語の感が強いのに比べ、東風という雅な響きは伝統俳句的である。東風でも強東風となれば、か細い老人は歩くのに難儀する。この句の情景はたしかにお馴染みではあるが、作者の優しい視線が見えて気持ちが良い。東風にあおられちょっと立ち止まった杖の老人に、手助けしましょうかという気分もうかがえる。
日頃の句会活動で作者の行き届いた気配りを知る評者には、作者を知ってはじめて「さもあらん」と思った次第である。「一息ついて」の中七が臨場感をもたらせる。
(葉 21.02.28.)