梅の香を愛でて渡るや太鼓橋 岡田 鷹洋
梅の香を愛でて渡るや太鼓橋 岡田 鷹洋
『この一句』
亀戸七福神吟行を巡り終えて、「番外」としてお参りした亀戸天神での詠である。一月九日という中途半端な日取りだったから、七福神の社寺は閑散としていたが、ここ亀戸天神はさすがにかなりの参詣人を集めていた。「共通テスト」の直前ということもあったのだろう、社前の絵馬掛けには「○○大学に受かりますように」といった、こりゃ気の毒だが無理だろうなと思われるような稚拙な字の絵馬がこれでもかとばかりに掲げられていた。
参道から大鳥居を潜って、社殿へ向かうに当って上り下る太鼓橋。我々一行はこの辺の地理に明るい名幹事に率いられ、裏路地伝いに天神さまの境内に潜り込んだ。「これぞまさに裏口入学」などとダジャレ名人がつぶやいた。
というわけでお参りしてから表参道目指して太鼓橋を渡ったのだが、欄干際に枝差し延べる梅の老樹。なんと、梅が花開いていた。寒の入りからまだ四日、「寒四郎」である。さすが天神さまの梅だなあと感心し、次々にマスクを外して香りをかぐ。「うん、いい香りだ」「そうか、匂うか、それならコロナは大丈夫だな」なんて言い合っている。この句はそんなおふざけは問題にしない、格調高い作品である。
(水 21.01.27.)