御仏の右ほほ染める寒あかね   金田 青水

御仏の右ほほ染める寒あかね   金田 青水 『この一句』  景を詠むにあたり、あれこれ詰め込んだり、漠然と描写するのではなく焦点を絞ることが大切、とは俳句の入門書のよく説くところ。この句がまさにその好例だ。仏像に冬の夕日が差している景を詠んだのだが、「右のほほ」に焦点を絞ったことで臨場感が増した。多分、寒茜は仏像の右側全体を照らしていると思われるが、作者には殊のほか右頬の茜色が印象深かったのだろう。その気持ちを素直に描写して好感が持てる句である。  作者は普段、散歩を兼ねた一人吟行でスケッチの腕を磨いている。この句も七福神詣での吟行詠だという。筆者は参加しなかったが、亀戸七福神のスタート地点、寿老人を祀る常光寺には石造りの阿弥陀如来像が鎮座している。写真を見ると、大きくて立派な座像だ。掲句の御仏はこのことと思われるが、聞くところによると、この寺を訪れたのは昼下がり、まだ空が茜に染まる前だ。おかしい。写生を得意とする作者に似合わぬ想像の一句だろうか。  実は作者は、吟行への参加が決まれば、よほど遠方ではない限り一人で下見をしていると聞く。今回も亀戸に数回足を運んだという。ということは、当日の景色ではなく、下見の折りの夕景色だったのだろうか。ともあれ、句作に真摯に向き合う姿勢には頭が下がる思いだ。 (双 21.01.22.)

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