窓越しの青天に点冬の蠅     前島 幻水

窓越しの青天に点冬の蠅     前島 幻水 『この一句』  室内からふと窓を見ると、よく拭きこまれた透明なガラスに黒い点が見える。外は冬の澄み切った青空。 この青い空が背景にあることで、黒い点に気づいたのだろう。よくよく見れば、黒い点は微かに動いている。汚れではなく、「冬の蠅」が点に見えたのである。日常の中の小さな発見の瞬間を、五七五にまとめた佳句である。  ところで、筆者は良い句だなとは思ったものの、最初「青天に点」の表現に引っ掛かりがあった。「てん」の繰り返しのリズムがぎこちなく、また、「天」と「点」を掛詞のように使ったのなら、少しやり過ぎではないかという気がした。もう一つ言えば、普通は「晴天」とするところを「青天」としたところにも作意が感じられた。もちろん、俳句はたとえ写生句であっても、表現として「作る」ものであるから、作意のない句などない。とどのつまり、その作意がプラスの効果を生むか、マイナスとなって足を引っ張るかである。  合評会の席上、「青空に点」だったらという意見が出た。声に出さずに「青空に点」に変えて読んでみたが、なんとも締まらない句になってしまう。「青空に点」と「青天に点」を比べてみると、後者の「てん」の繰り返しのぎこちなさが、読み手を惹きつける効果、一句に刺激を与えるプラスの効果になっているように思えた。作者によれば、最初は「青空に点」だったが、やはり面白くないので、わざと「青天に点」にしたとのこと。その効果は、読み手のこちらにも、知らず知らずに伝わっていたの…

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