年ごとに家族の増えて福笑い   高井 百子

年ごとに家族の増えて福笑い   高井 百子 『季のことば』  お正月になったら、男の子は凧揚や独楽を、女の子は鞠や追羽子をついて遊びましょう、という童謡がある。子供のころは正月が待ち遠しくて「もういくつ寝ると」と指折り数えていたのを思い出す。正月の伝統的な遊戯としては、ほかに福笑、歌留多、双六などの屋内での遊びがある。凧揚だけは春の季語だが、いずれの遊びも新年の季語となっている。そういえば、昔の雑誌の新年号には必ず福笑や双六が付録についていた記憶がある。一方、ゲーム全盛の現代は幼児から大人までがスマホや携帯ゲーム機に熱中し、伝統的な遊びとは無縁。おそらく福笑なんか知らない子の方がが多いのではないだろうか。  しかし、作者の家庭はそうでもないようだ。我が子に嫁や婿を迎え、やがて孫が出来て年々家族が増えていく。正月には、一族郎党打ち揃い賑やかこの上ない。そうだ、福笑をしよう。大事にしまっていた福笑セットを取り出すと、孫たちは興味津々。「ばぁばがやってみせるから」と目隠しをして、のっぺらぼうのお多福に目鼻を置く。目隠しを取ると、とんでもない変顔のお多福ができ、一同大笑い。福々しい笑いに包まれた理想的な大家族が浮かぶ。誠にお正月に相応しいお目出度い一句である。 (双 21.1.1.)

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