川底に色よき朽葉山眠る 金田 青水
川底に色よき朽葉山眠る 金田 青水
『合評会から』(番町喜楽会)
水牛 綺麗な谷川の清澄な気分が感じられます。初冬の良く晴れた午後の感じがする、おとなしくていい句です。
木葉 奥入瀬かどこかの渓流で、真っ赤な落ち葉が澄んだ水の底にある光景を思い浮かべます。
冷峰 川底の「朽葉」に哀愁を感じます。枯葉ではなく「朽葉」としたところがいいですね。
二堂 綺麗な山の静けさがよく出ています。
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「山眠る」は、俳句を詠む人なら一度は使ってみたい魅力的な季語である。中国宋時代の詩からとられているが、春夏秋に対応した笑ふ、滴る、粧ふの表現がやや技巧的であるのに対し、山眠るは不自然さがない。木々が葉を散り尽くし、ひっそりと静まり返った山は、確かに眠っているように見える。雪にでも覆われていれば、いっそう静寂感が深まる。
掲句はその山を描写するのに川を持ってきている。まずその着想に魅かれた。秋の山を華やかに装った赤や黄の葉は散り落ち、川底を埋めている。「色よき」の表現で、水中の葉がなお秋の名残をとどめていることを印象づける。雪が降り、山が眠りを深めれば、色よき葉も文字通りの朽葉となって行く。山容の移り変わりに色の変化を重ねることで、眠る山の寂寥感をさらに深めている。
(迷 20.12.23.)