葱鮪鍋飲まぬ老夫が喰ふばかり  藤野十三妹

葱鮪鍋飲まぬ老夫が喰ふばかり  藤野十三妹 『合評会から』(酔吟会) てる夫 奥さんが食うばかりではなくて、ご主人が食うばかりというのが面白いと思って頂きました。 而云 「喰ふばかり」という措辞はあまり感心しないけど、面白いので頂きました。だいたい、飲まない夫はよく食べます。 双歩 山口斗詩子さんのところのご夫婦を想像しました。 *       *       *  而云さんの言うように飲まない夫は肴をばくばく食べる。それを双歩さんは、故山口詩朗さんを思い浮かべながら昔語りした。この辺りは酔吟会の常連でないとよく分からない楽屋話みたいなものだから、こうしたオープンなブログにはふさわしくないやり取りかもしれないが、臨場感があるのであえて載せた。  亭主はほとんど飲めず、連れ合いが行ける口という夫婦がよくある。さばけた亭主は盃のやり取りはカミサンに任せて、自分はもっぱら喰いながら酔っ払いの他愛もない話を聞いて楽しんでいる。  作者は男をしのぐ酒呑童女である。合評会に上がった斗詩子さんも酒豪。ごテイシュはいずれもよく出来た御仁。パクパク食べてはふむふむとうなずいている。ただ、この句は「老夫が」ではなく、「老夫は」とした方が良いのではないかと思うのだが、そんな細かいことを気に留めるような作者ではないと、後から気がついた。(水 20.12.17.)

続きを読む