枯菊を焚くや残り香果つるまで 水口 弥生
枯菊を焚くや残り香果つるまで 水口 弥生
『合評会から』(日経俳句会)
青水 菊を焚くとは、昔から詠まれている。情緒があってとてもいい。
鷹洋 過ぎゆく季節を菊に託してうまく詠んでいる。香果つるまでと名残惜しさを、きっと自分にも託しているのだろう。心の発露として。
守 もうこんな晩秋の風景、身近には見られないなと思いつつ採りました。
水馬 仏壇か、お墓にあった菊を庭で燃やしているのかなと思いました。故人のことを惜しみながら。
阿猿 枯れても花びらが散りにくい菊が、もとのシルエットを残したまま炎に包まれ、断末魔の香りを放って灰になる。荒涼とした美しさを感じます。
十三妹 過ぎし日の想い出でしょうか。今もなお心に残る痛みを思い切ってすっぱりと焼き尽くそう……。そんな句ではないかと。
* * *
「うま過ぎる」一読、そう思った。口調が実に良い。正直、格好良すぎて嫉妬を覚えた。素直に褒められず「いかにも俳句をつくりました、という句」などと貶めるような選評を吐いた。大いに不明を恥じた。作者は令和元年度の日経俳句会賞を受賞したほどの実力者だ。常に繊細で美しいことばを紡いで作品を作っている。上手いはずだ。
みなさんの選評を見るにつけ、句を選ぶときはもっと素直な気持ちにならなくては、嫉妬したならしたと正直に言うべきだ。大いに反省させられた一句。(双 20.12.15.)