ごみ出しの堅きサンダル冬はじめ 塩田命水
ごみ出しの堅きサンダル冬はじめ 塩田命水
『季のことば』
俳句は季節の微妙な変化を多様な季語で表す。歳時記には冬を冠する時候の季語だけでも、初冬(冬初め)、立冬(冬に入る)、冬浅し、冬暖か、冬麗、冬めく、冬ざれ、冬深し、冬終るなど多数並ぶ。初冬は、立冬を過ぎてからの1か月ほど。新暦では11月初めから12月初旬にあたる。「まだ晩秋の感じも残るが、寒さに向かう引き締まった気分も感じさせる」(角川歳時記)季語だ。
掲句は季節の変わり目を、サンダルという意外なもので表現する。早朝に妻に頼まれたのか役割分担なのか、サンダルを履いてごみ出しに出た。おそらく素足であろう。暖かい時には感じなかったサンダルの堅さに気づき、冬の訪れを皮膚感覚で捉えている。鋭敏な感性に共感する人が多く、句会で高点を得た。
冬初めは映像を持たない季語なので、見聞した情景や体験によって季節感を具体的に表すことになる。早朝のごみ出しという生活の断面で気づいた季節の変化。サンダルの堅さは、作者の小さな驚きと初冬の硬質な空気感を、鮮やかに伝えている。句会では、漢字は「堅き」でいいのか、「硬き」や「固き」ではどうかという声もあった。冬初めの季節感にどの漢字がしっくりくるか、これも微妙な感覚が問われる。
(迷 20.11.24.)