ぐい呑みを厚手に替えて秋深し 植村 博明
ぐい呑みを厚手に替えて秋深し 植村 博明
『合評会から』(日経俳句会)
ゆり 冷えてくると日本酒が美味しくなる。猪口を厚手のものにして燗酒を飲むのでしょうか。
光迷 厚手のぐい呑みはそれなりの大きさです。ぬる燗、熱燗をゆっくり口に運ぶ季節。
而云 俳句として整っている、酒飲みの句で、美味いんだろうね。
実千代 手に触れる感覚を通して、秋の空気の冷たさが伝わります。
反平 熱燗、美味そうだなあ。つまみはじゃこに醤油ひとたらしでも十分。
操 変わり行く季節の深まりを感じる。
百子 お酒を愛する人のこだわりなのでしょう。
昌魚 酒器の衣更えとはいいですね。そろそろ熱燗でしょうか。
* * *
秋が深まると酒好きは日本酒が恋しくなる。旬の具材で鍋など仕立てて、温めた酒を大ぶりのぐい吞みで味わう。夏場は切子のグラスで冷酒を楽しんだりしたが、燗酒には厚手のどっしりとした志野や萩焼が合う。「厚手に替えて」という巧みな措辞から、季節の変化とそれを楽しむ酒好きの心情が伝わる。合評会の句評はいずれもその心情に反応し、自らの思いを重ねている。日経俳句会の10月例会で最高点を得たのも納得である。
(迷 20.11.16.)