濃口はいまだ好かぬと龍田姫   廣田 可升

濃口はいまだ好かぬと龍田姫   廣田 可升 『この一句』  「そうか、龍田姫は奈良、かつての大和で生まれ育ったのか。だったら、濃口が口に合わないのももっともなこと。佐保姫も同様だろう。それにしても、いいところに目を着けたものだ。作者は関西の人に違いない」。選句表でこの句に出会った時の感想である。  そして「額田王も紫式部も淡口派だろう。濃口派となると…、北条政子じゃつまらないし、虎御前といっても大方の人は知らないかもしれない。『虎が雨』という季語はあるものの」という想いが続いた。  料理には地域の特性が滲み出る。大阪の人が東京で蕎麦を前に「こんな黒い、辛い汁は」と嘆くのを聞いたことがある。一方、自分は鹿児島で刺身を楽しもうと思ったものの、箸が動かなくなった。醤油が甘くて、如何ともし難かったのだ。  鹿児島といえば薩摩、薩摩揚となるが、地元ではそういう呼び方はしないとか。「大阪では天婦羅という」という説も聞いた。関西では「おでん」を「関東炊き」ともいうらしい。醤油に味噌、餅の形…まさに所変われば、である。 (光 20.11.05.)

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