吸ひ込んだ息の深さや秋の空 植村 博明
吸ひ込んだ息の深さや秋の空 植村 博明
『この一句』
「深呼吸」というものは誰が考え出したものなのだろう。古武道にも古代中国の医術・道術にも呼吸法があるから、大昔からあったのだろうが、一般化したのは明治大正時代に欧米から「体操」「海水浴」などという健康法が導入されて以来と思われる。それがラジオ体操に取り入れられて、「大きく息を吸って、吐いて−」ということで日本全国に広まった。近ごろは腹式深呼吸など、いろいろなやり方がテレビやネットで紹介されている。ヨガや太極拳にもそれぞれ独自の呼吸法があり、今や深呼吸は老若男女、知らぬ者は居ない。
近ごろは地方の観光地などで、万物の活力の元となる「気」が発生するなどという噂が流れて人気スポットになる場所が出て来た。そこで深呼吸したり瞑想したりすると、体内に気を取り込むことが出来て、活力が増すというのである。
そうしたものの真偽は定かではないが、空気の良い山間地や海浜で深呼吸すれば身体にいいことは確かだろう。取り分け気分が爽快になるのは天高く晴れ上がった秋の空の下である。腹の皮が背中に張り付くほど、ゆっくりと息を吐き出す。そしてまたゆっくりと、静かに鼻から息を吸って、胸と腹をこれでもかと膨らます。これを数回繰り返すと、寿命が伸びるような気がする。
(水 20,11,03.)