手を打てば龍が鳴くなり秋の空 大下 明古
手を打てば龍が鳴くなり秋の空 大下 明古
『この一句』
これは東照宮の「鳴き龍」はじめ、由緒ある寺院の天井画を仰いでの句と取ってもいいが、やはり「秋の空」だから、真っ青に晴れ上がった大空の下で手を打ったのだと取りたい。
天高く馬肥ゆる秋である。爽やかで、深呼吸一つするたびに寿命が一年ずつ伸びて行くような気分である。特に令和二年の今年は年明け早々コロナ禍騒動で、しかも長梅雨、猛暑、台風による豪雨と気象異変が続いた。ご丁寧に秋黴雨(あきついり)という秋の長雨もちゃんと降り続き、このところようやく秋らしい空になってきた。
秋空を泳ぐ雲を眺めていると誰しも童心に返る。果てしなく広がる動物園であり水族館でもある。象さん、キリンさん、熊、狸、狐、兎、クジラ、鮪、蛸や烏賊、鯖、鰯・・・さまざまな生き物が浮かんで、ゆっくり泳いでいる。
大きな龍だっている。龍はそろそろ淵に潜る頃合いである。友達みんなで歌って踊って手を叩いたら、龍が「よーし、降りて行くぞー」と鳴くに違いない。
(水 20.10.26.)