老いてゆく日々の早さや秋の空 藤野十三妹
老いてゆく日々の早さや秋の空 藤野十三妹
『合評会から』(日経俳句会)
反平 人生百年とはいうものの、この分じゃあっという間ですな。そんな気分で見上げる空は淋しさに満ちている。
雀九 漠然と誰もが感じていることだが、同輩は秋の空になおのこと感じる。
操 澄みわたる秋空に老いるわが身を投影、時の早さが滲みる。
実千代 一年があっという間に過ぎていくこの頃、年を重ねるとはこういうことなのですね。秋の空をみて感慨にふける気持ちが伝わってきます。
二堂 確かに見上げると、もう秋かと月日の経つ速さを感じます。
冷峰 還暦、喜寿と重ね明日は八十路、毎日が本当に早く感じられます。
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作者はのたまう「次々と届く友の訃報……。懐かしく楽しかった思い出を話し合う相手も少なくなって、秋涼がいっそう身にしみます。老いてゆくのはこういうことなのかと」。
斗酒尚辞さず、句会後の「懇親酒会」には必ず参加し、天を貫く怪気炎を上げ続けた御方もついにこういう句をお詠みになるかと、うたた感慨に沈む。と思い込むのはいささか甘い。「何をくよくよ、さあ一杯やりましょう」と発破を掛けてくるに違いないのだ。
(水 20.10.23.)