大和路に風吹き抜けて龍田姫 池内 的中
大和路に風吹き抜けて龍田姫 池内 的中
『合評会から』(番町喜楽会)
冷峰 「龍田姫」の季語で箱根を詠んだ句もあったが、やはり龍田姫には「大和路」が正統です。
百子 秋の気配を素直に感じさせるいい句だと思います。
白山 「風吹き抜けて」はとても気持ちの良い表現で、「龍田姫」の季語によく合っています。
水兎 龍田姫がするりと衣を落とすように、風が紅葉を散らしてゆく姿が見えるようです。
水牛 晩秋の大和路は風が冷たくて、「風吹き抜けて」はいい詠み方ですね。
* * *
最初、「大和路」と「龍田姫」では付き過ぎで、あたりまえ過ぎるのではないかという気がした。それに、「〇〇路」という表現は如何なものかとも思った。例えば信濃路というと、ある人は佐久や上田を思い浮かべ、また、ある人は松本や白馬を思い浮かべたりして、どうしても印象が散漫になってしまうところがある。
しかしながら、この「大和路」は、生駒から平群に流れる竜田川に由来する「龍田姫」と合わせたことで、土地柄は明確である。皆さんの選評を聞いていて、なるほどそこに「風吹き抜けて」はいいなと、あらためて感心した。俳句を詠むといえば、いつも何かとひねくり回そうとする傾向のある筆者にとって、反省を促す清涼剤のような一句である。
(可 20.10.21.)